阪神高速 更新計画
 平成26年に概略公表されていた阪神高速道路の更新計画について、平成27年1月15日に行われた第18回国土幹線道路部会にてその内容や事業期間が公表されました。
第18回国土幹線道路部会(国土交通省道路局公式サイト内)へのリンクです
 ここでは、その阪神高速道路の更新計画について、参考図などで工法や工事内容等が公表されているものについて抜粋して、その発表内容の要約と懸念される影響について私の考察を記載しております。
現時点での発表内容について記載しておりますので、今後各工事毎の詳細が発表された際には、また考察を含めて追記したいと思います。

阪神高速道路3号神戸線 湊川付近 大規模更新計画


↑阪神高速道路3号神戸線 神戸市長田区の湊川付近
更新工事の該当箇所(推測)を赤線で囲ってあります。(マウスを乗せると表示されます)

 
路線名
3号神戸線
事業年度
平成28〜32年度
対象箇所(場所)
湊川付近
対象箇所の距離
0.4km
事業費(見込)
162億円
開通年
昭和43年
更新計画内容
橋梁の桁・床版取替

工事期間中の本線
 上下線を期間をずらして通行止めにして工事を行い、上り線通行止め期間は下り線を利用して対面通行。下り線通行止め期間は上り線を利用して対面通行。
 橋梁の桁も交換するので、対面通行の規制期間が1年以上の長期になる可能性もあります。

懸念される影響
 数年以上の長期間の車線規制が予想されますが、近辺で代替道路となる高速道路やバイパスは、新神戸トンネル経由の北神戸線ルートしかなく、工事期間中は本線での渋滞以外にも、生田川での新神戸トンネルを経由する車による渋滞が予想されます。
 特に新神戸トンネルの国道2号出入口と3号神戸線の生田川出入口は近いのですが直結されておらず、特に生田川→国道2号入口は短い区間に信号が複数あるなど乗り継ぎのネックになりそうです。湊川JCTが開通する前にに行われていた神戸長田〜柳原の乗継が復活すれば、良い対策にはなるかと思います。5号湾岸線の六甲アイランド北〜神戸山手線間さえ開通していれば、代替ルートとして機能を果たしていたはずなのですが、都市計画が決定しているだけで未着工なので、この3号神戸線の更新工事までには到底間に合いません。
 3号神戸線では、1週間程度の期間ではありますが上下線の車線規制を伴っての工事するというものは過去にいくつも実績があります。今回は上下線が規制され対面通行となりますが、新神戸トンネルが阪神高速になったことで他の有料道路を介さない別ルートが既にある他、北神戸線も中国自動車道と直結し、神戸山手線もあるなど、周辺道路状況は格段に良くなっているので、対面通行規制が始まっても別ルートへの迂回が進み、それほど渋滞は起きないかもしれません。



阪神高速道路3号神戸線 京橋付近 大規模更新計画


↑阪神高速道路3号神戸線 神戸市中央区の京橋付近
更新工事の該当箇所(推測)を赤線で囲ってあります。(マウスを乗せると表示されます)



↑建設時の様子(阪神ハイウェイ NO.10より)

 
路線名
3号神戸線
事業年度
平成33〜40年度
対象箇所(場所)
京橋付近
対象箇所の距離
0.3km
事業費(見込)
249億円
開通年
昭和41年
更新計画内容
橋梁全体の架替

工事期間中の本線
 長期間の通行止めは行わず、並行して4車線の迂回仮説道路を整備。工事期間中も車線数は減らないですが、速度制限等の可能性が予想されます。


更新工事後も景観に配慮した高架道路を
 この区間は、阪神高速道路の初期に建設されたものですが、波止場に高架道路を造るので桁下を占有して工事を行うのが困難という理由と、当時から景観に配慮して「ディビダーグ橋」という橋を採用しています。橋桁が少しアーチ状になっており、当時としては神戸らしい画期的なデザインの高架道路だったのではないかと思います。今回の更新工事はこのディビダーグ橋の構造が原因なのですが、更新工事で架け替えた後も建設当時と同様に周辺景観に配慮したものを作って頂きたいところです。

懸念される影響
 4車線で仮設の迂回路が作られるので、影響は最小限に抑えられそうですが、すぐ東にある京橋PAと出入口は、迂回路への接続部分になる可能性があり、工事期間中は規制が行われるのではないかと思います。
 また、迂回路建設には用地買収が必要ですが、周辺は住宅ではなく、港というか船の係留場所のようなところで、関係機関との調整が必要になりそうです。



阪神高速道路11号池田線 大豊橋付近 大規模更新計画


↑阪神高速道路11号池田線 大阪市淀川区加島〜豊中市二葉町の大豊橋付近
更新工事の該当箇所(推測)を赤線で囲ってあります。(マウスを乗せると表示されます)

 
路線名
11号池田線
事業年度
平成37〜41年度
対象箇所(場所)
大豊橋付近
対象箇所の距離
0.3km
事業費(見込)
126億円
開通年
昭和42年
更新計画内容
橋梁の桁・床版取替

工事期間中の本線
 上下線を期間をずらして通行止めにして工事を行い、上り線通行止め期間は下り線を利用して対面通行。下り線通行止め期間は上り線を利用して対面通行。
 更新計画で発表された参考資料掲載の図によると、この工事で高速道路の道幅(路肩)を少し広げるようで、それにより横を通る一般道路部分も少し外側へスライドさせるようです。
 

懸念される影響
 ただでさえ渋滞が慢性化している路線ですが、そこを迂回路も作らずに長期間に渡り対面通行の車線規制を行うので、周辺道路への影響が極めて大きいです。工事内容も、ただの橋桁交換ではなく、すぐ横を通る一般道路を含めたややこしい工事になるので、今回公表された事業期間で終われるかどうかも微妙な気がします。特に、現在の側道の外側に橋脚を増やして(現状の橋脚を延ばして脚を新たに外側に置く感じです)高速道路に並行する一般道路を外側へ少しスライドさせるので、恐らく用地買収が必要になるかと思いますが、内容が発表されたばかりの計画で、今後どうなるか先行きが心配です。
 迂回ルートでは一般道路だと尼宝線あたりが使い易い気もしますが、信号だらけなので結局迂回車で大渋滞しそうです。新御堂筋へもかなりの迂回車が流れると推測されますが、その新御堂筋も11号池田線と同等の渋滞道路で、酷い時は千里中央から梅田まで1時間なんて事もあるので、空いてる時間以外は迂回路として使えなさそうです。かなり大回りですが、池田〜大阪市内は中国自動車道の中国豊中IC〜近畿自動車道守口JCT経由の12号守口線というのもありますが、平日夕方は吹田の料金所や摂津での渋滞もある他、通行料金もそれなりにかかるのがネックです。かなり西になりますが三田〜西宮には、六甲山の盤滝トンネル(西宮北有料道路)経由のルートもありますが、ここも結構渋滞したりするので、もう逃げ道がありません。


首都高の40億円が回ってきたことで突貫工事になった路線
 大豊橋付近は、阪神高速道路の公式サイトによると、万博に向けて急ピッチで整備する為に一般道路用として整備された橋梁を利用し、設計に考慮されてない後打ちしたコンクリートによる重量負担などが、橋の損傷の原因の一つとしています。本来なら高速道路用に再設計すべきところを突貫工事で建設した結果なのですが、実は昭和39年当時の阪神高速道路公団ではこの池田線(当時は空港線と呼ばれてました)の加島から北は全体計画には入っておらず、他の路線の整備を急いでいました。
 その急遽事業化された理由が、昭和39年に首都高速道路公団が使い残した40億円があり、阪神高速道路公団が当時の建設大臣にその40億円を阪神高速に回してもらおうと直談判したところ、空港と大阪市内を結ぶ11号池田線の整備に使う事を条件としてその40億円が回ってきたことにあります。阪神高速道路公団としては、他の路線の整備にこの40億円を使うつもりで直談判に行ったようですが、11号池田線の整備が条件で回ってきた為、万博関連事業として急いで建設する事になりました。その後昭和40年8月に事業化、さらに設計と並行して都市計画決定と基本計画の指示を受け、わずか4ヵ月後の昭和40年12月には工事実施許可書認可を受けて入札まで行うなどし、驚異的なスピードで事業を進めて昭和42年の8月には福島〜豊中北が開通しました。


拡幅される橋脚について
 この大豊橋付近といのは、豊中市側の住所で言うと「豊中市二葉町」の付近で、ここはかつて阪神高速道路「神崎川線」とのJCTが計画されていた場所です。11号池田線は阪神高速でも初期の頃に作られたので、平成に入って計画された神崎川線との接続については勿論考慮せずに作られています。今回その接続予定地だった場所が、大規模な更新工事をする事になったわけですが、橋脚を用地確保が必要なほどに拡幅するなど、少し大げさな気もします。実際、公表された図には、本線の路肩を拡幅した事で、側道が外側にスライドする為に橋脚が拡幅されるようですが、拡幅された橋脚には1.5車線分ぐらいの橋桁なら載せられそうなスペースが出来ています。もしかしたら、工事期間中に側道の迂回路の橋桁を載せる予定なのかもしれませんが、それなら仮設でもいい気がします。
 阪神高速では、JCTの構想があったりするもについては、将来に可能性を残すためか、本線に分岐準備部分を作ったり(8号京都線の名神高速とのJCT準備箇所)、JCTの連絡路などを通すスペースを予め確保する事(6号大和川線の堺線との大和川第一JCT)があり、もしかしたら今回の更新工事では、計画としては消えてしまった「神崎川線」への可能性を残すものが出来るかもしれません。
※阪神高速道路「神崎川線」についてはコチラをご覧下さい




阪神高速道路13号東大阪線 法円坂付近 大規模更新計画


↑阪神高速道路3号神戸線 大阪市中央区の法円坂付近
更新工事の該当箇所(推測)を赤線で囲ってあります。(マウスを乗せると表示されます)
青線で囲ってある箇所は、高速道路が地平部分にあります。今回の更新計画である橋脚の桁・床版取替とは異なる工事が行われると思われます。

 
路線名
13号東大阪線
事業年度
平成39〜41年度
対象箇所(場所)
法円坂付近
対象箇所の距離
0.2km
事業費(見込)
56億円
開通年
昭和53年
更新計画内容
橋梁の桁・床版取替

工事期間中の本線
 上下線を別々に工期をずらして工事を行い、上り線工事期間中は下り線を利用して対面通行。下り線工事期間中は上り線を利用して対面通行。

懸念される影響
 ここも渋滞が慢性化している路線ですが、幸い工事箇所が市内中心部に近く、大阪市内へ入る車は手前の森之宮で降りる事も出来ます。また、事業が開始される平成39年には大和川線が全線開通しており、東大阪線を通りぬけて大阪南部へ向かう車については大和川線を迂回ルートとして利用できます。ただ、大阪の東西を結ぶ大幹線ですので、工事期間中の一般道路への影響は大きいと予想され、すぐ下を走る中央大通は渋滞が日常になりそうです。



阪神高速道路14号松原線 喜連瓜破付近 大規模更新計画


↑阪神高速道路14号松原線 大阪市平野区喜連瓜破付近
更新工事の該当箇所(推測)を赤線で囲ってあります。(マウスを乗せると表示されます)


↑(参考画像)同じ構造のディビダーグ橋である阪神高速1号環状線末吉橋付近(阪神ハイウェイNO.10より)
この構造の橋は交通量の多い道路を跨ぐ場合に採用されていました。

 
路線名
14号松原線
事業年度
平成32〜38年度
対象箇所(場所)
喜連瓜破付近
対象箇所の距離
0.2km
事業費(見込)
238億円
開通年
昭和55年
更新計画内容
橋梁全体の架替

工事期間中の本線
 並行して4車線の迂回仮説道路を整備。工事期間中も車線数は減らないですが、速度制限等の規制が予想されます。

開通後5年で垂れ下がりだした喜連瓜破のディビダーグ橋
 該当区間の高架はディビダーグ橋と呼ばれる橋で、橋脚から桁を少しづつ継ぎ足していく方法で高架道路を建設する事が可能な為、橋脚周辺以外には地上(桁の下)を占有する必要がなく、阪神高速道路では河川や交通量の多い交差点を渡る際に採用されていた橋です。3号神戸線の大規模更新工事予定の京橋付近も波止場を通る為に、14号松原線の喜連瓜破とおなじこのディビダーグ橋で作られていましたが、同じ原因で更新工事の対象となっています。
 ですが、この14号松原線の方は、3号神戸線より10年以上後の昭和55年に開通した区間なのですが、開通してたった5年後の昭和60年にはヒンジ部分の垂れ下がりが問題となり、その後、走行面の改善のために舗装のオーバーレイが昭和61年と平成5年に行われました。さらに平成15年度の松原線大規模修繕工事の際に、垂れ下がりの抑止と回復を目的に、桁の下にケーブルを張ってたわみを抑えるようした下弦ケーブル補強が施されていました。しかし、これも抜本的な対策にはならなかったようで、今回の更新工事で既設のディビダーグ橋そのものを撤去して一般的な鋼製の連続桁に架け替える事になりました。
 尚、平成15年度に行われた「下弦ケーブル補強」は土木学会関西支部技術賞を受賞しています。

懸念される影響
 迂回ルートになる大和川線が全線開通した後になり、仮設道路も4車線あるので影響は最小限で済みそうです。しかし、公表された図を見る限りでは仮設道路建設には周辺で用地買収が必要で、海の側を走る神戸線の京橋と違い、こちらは住宅などがある街中なので工事に着手するまでの道のりは大変厳しいと予想されます。




阪神高速道路15号堺線 湊町付近 大規模更新計画

↑15号堺線 湊町付近の断面図(阪神高速道路公団20年史より)
この区間は地下街の構造物に橋脚の基礎が乗せられている場所があります。


↑15号堺線 湊町付近工事中の基礎(阪神ハイウェイ NO.30より)
地下街の構造物の上に画像のような「田」の字型の橋脚の基礎が作られています。


↑15号堺線 「田」の字型の橋脚の基礎の図(阪神高速道路公団20年史より)

 
路線名
15号堺線
事業年度
平成27〜36年度
対象箇所(場所)
湊町付近
対象箇所の橋脚数
橋脚9基
事業費(見込)
191億円
開通年
昭和47年
更新計画内容
橋梁の基礎取替

工事期間中の本線
 本線は車線規制をしない予定ですが、基礎を取替える工事なので、期間中は下を走る一般道路の千日前通で車線規制が行われそうです。

懸念される影響
 一般道路の千日前通には影響がありますが、元々繁華街で、路上駐車や乗降中のタクシーなんかで1車線規制されてるようなものなので、工事期間中も大きな影響は無さそうです。




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