嫁入り?
《 ガチャッ 》
「ただいまぁ〜」
「おかえり。今日は遅かったわね」
「ちょっと、変な動物につかまっちまって…」
「あらあら…」
…さて、どうしたものか。
一応、このネコを飼っていいか聞いてみるか…
たぶん、聞くまでもないと思うけど……どうかなぁ?
こんなネコはダメって言われるかもなぁ…
「………」
俺はミミをチラッと見る。
「にゃ?」
何もわからないといった顔で、首をかしげる。
「…ふぅ」
ダメもとで聞いてみるか…
《 トコトコトコ 》
「母さ〜ん」
俺は母のいる台所に行き、声をかけた。
「…なに?」
「あのさ…、ネコ飼っていいかな?」
「ネコ?」
「ああ。誰か拾って下さいってあったから拾ってきたんだ」
「そうなの?」
「うん」
「…で、どんなネコなの?」
「こんなネコなんだけど…」
そう言って、俺はミミを台所に連れてきた。
「あらあら、大きなネコちゃんねぇ〜」
「………」
こんな非常識なモノを見て、その反応か…
さすが、俺の親だっ!
スケールがでかいぜっ!!
「あんたに彼女ができて、お母さん嬉しいわ」
「…へ?」
オイオイ、なに言ってるんだよ…
これの何処が人間なんだよ…
でも、見えなくもないか…
どっちなんだぁ〜?
自分でもわけわからん。
「母さん、この子はネコなんだ」
「あら? そうなの」
「正真正銘ネコ……らしい」
そう……だよな?
「お母さんったら、早とちりしちゃって」
「…いや、普通の発想だと思うよ」
普通の人なら、人間がコスプレしている程度にしか思わないよなぁ。
逆にミミがネコという方が、常人じゃ考えられないだろうよ。
「世の中には、いろんなネコがいるのねぇ〜」
「………」
俺の親は常人じゃないかもしれない…
「そ、それでさぁ……このネコ飼ってもいいかな?」
「おっきなネコちゃんを?」
「やっぱダメ?」
「母さんは別にいいわよ」
「ほんと!?」
「ええ。だって娘ができたみたいだもの」
「む、娘ねぇ…」
まぁ、いっか。
結果はどうあれ、許可は取れたことだし。
「じゃぁ、俺は部屋に行くよ」
「ちょっと待ちなさい」
「なに?」
「避妊だけはしっかりしなさいよ」
「な、なに言ってるんだよっ! 俺とミミはそんな関係じゃないって」
「あら、このネコちゃんはミミちゃんって言うの?」
ぎくっ!
余計なことを言ってしまった…
「そ、そうだよ。それにミミはネコじゃないか」
「でも、この体ならできるかもしれないわよ」
「そ、それは…」
たしかに……って、そういう問題じゃない。
「ミミもなんとか言ってくれ」
「え? ミミちゃんって喋れるの?」
「ああ。ミミ、母さんに挨拶しろ」
「うにゃっ☆ 初めまして、ご主人様のお母さん」
「初めまして、ミミちゃん。息子をよろしくね」
「わかりましたにゃ〜」
「………」
こ、この2人(1人と1匹)は非常識だぁー!
「私のことは『お母さん』って呼んでね」
「うにゃっ☆」
「それにしても、息子も隅におけないわねぇ〜」
「…え?」
「こんな可愛い子を連れくる甲斐性があるなんて…」
「だから、ちがーーう!」
「ご主人様、顔が赤いにゃ」
「………」
「うふふふふっ」
「にゃはははっ」
こいつらにはついていけん…
「俺……部屋に行くわ………」
「ちょっとちょっと」
「今度はなに?」
イヤ〜〜な予感が…
「ミミちゃんに『ご主人様』なんて呼ばせて……」
「あ、あれはミミが勝手に呼んでるだけだよ」
「照れない照れない」
「………」
「さしずめ今晩は『ご主人様と飼い猫のSMプレイ』かしら?」
「そ、そんなことしねーよ!」
「ふふふっ」
「冗談はよしてくれ…」
「SMってなんですにゃ?」
タイミング良く、ミミが尋ねてくる。
「それは……『さだ ま○し』のことだ」
「ふにゃ〜〜ん?」
ミミはわかないのか首をかしげた。
「それだったら、イニシャルは『MS』だと思うけど…」
「それは『モ○ルスーツ』」
「あら? そうだったかしら」
「……ふぅ」
俺は精魂疲れ果てて、ふらふらと部屋に向かった。
すると……
「ミミちゃんも行きなさい」
「うにゃっ」
ミミが俺の後についてきた。
《 ガチャッ 》
「つ、疲れた…」
俺は部屋に入るなり、ベッドに倒れた。
「ご主人様、ご主人様」
「…ん?」
ミミが呼ぶので顔を動かして見ると、ミミは入り口で突っ立っている。
「どうした?」
「ミミの体、濡れているから…」
「濡れている?」
う〜〜ん。
少しは濡れているが言うほどではないと思う。
まぁ、タオルでもだしてやるか…
「えーっと…」
俺はタンスからタオルを取り出して、ミミに渡した。
「ほれ、これで体を拭けばいい」
「ご主人様が拭いて☆」
「…へ?」
「ご主人様に拭いてほしいにゃん☆」
「………」
お、俺に拭いてほしいだと?
そのボディーを俺が拭くのか?
………
だ、ダメだダメだ!
そんなことしたら……いや、少しくらいは…
うおおおおぉぉぉぉーーーーー!!!!
「ご主人様ぁ〜〜早くぅ〜〜」
「わ、わかったよ」
ここまで言われたら仕方ないよな。
うんうん…
決して、俺がそうしたいわけじゃなないんだからなっ!
うん、そうだ、そうなんだよな、うん。
「ほら、部屋に入って来いよ」
「にゃ? 部屋が濡れちゃうにゃ」
「そんなことないって」
俺はミミの手を取って、部屋の中にいれた。
「そ、それじゃ……拭くからな」
「うにゃっ☆」
《 ふきふき 》
「にゃははは」
「………」
《 ふきふきふき 》
「にゃははははは」
「………」
《 ふきふきふきふき 》
「こ、こそばいにゃぁ〜〜」
「こらっ、じっとしないか」
「にゃははははははは」
「あ、暴れるんじゃないっ」
「にゃぁっ!?」
「うおっ!?」
《 ドンバタバッタン 》
「にゃぁ…」
「だ、大丈夫か……え?」
転んだ弾みで、ミミを押し倒す形になってしまった。
「うにゃ?」
「いや、これは……その……」
ミミは俺の顔をじっと見る。
「すまない」
立ち上がろうとすると、ミミが俺の首に手をまわしてきた。
「ミミ?」
「………」
俺はミミの顔見る。
すると、ミミと目が合ってしまった。
「……あ」
「………」
な、なんか恥ずかしいな…
女の子と見つめ合ったことないし…
ど、どうすりゃいんだ?
「……いいにゃ」
「…え?」
いいって……なにが?
「ご主人様なら……してもいいにゃ」
「してもって…」
やっぱ、アレだよなぁ…
「ご主人様に拾われたときから、ミミは心も身体もご主人様の物にゃ」
「…ミミ」
「優しいご主人様になら…」
「オイオイ…。もしかしたら、俺は悪いヤツかもしれないぞ?」
「そんなことないにゃ。ミミにはわかるにゃ」
「………」
動物には人の心がわかるって聞いたことがあるな…
まさか、ミミも……?
「ご主人様はとっても優しい人にゃ」
「……ミミ」
な、なんか泣けてきた…
うぉぉぉ〜〜ん
「ご主人様、泣かないで…」
《 ぺろぺろ 》
ミミは俺の涙を舌で舐めとる。
「元気だしてにゃ」
「…ミミ!」
《 ギュッ!! 》
俺はミミをおもいっきり抱きしめた。
誰にも渡さないかのように……
「ミミ〜〜!!」
「ご主人様ぁ〜〜ちょっと痛いにゃぁ〜」
「どこにも行かないでくれっ!」
自分でも気付かないうちに、俺はそんな言葉を口にしていた。
「ご主人様…」
「ずっと俺の側にいてくれ……ずっと………」
俺の言葉は止まらなかった。
「側にいるにゃ…」
「…え?」
「ミミはご主人様の側にずっといるにゃ」
「ほ、本当か?」
「うにゃっ☆ だって、ミミはご主人様が大好きだから」
「俺もだよ……ミミ」
俺はミミが側にいるという返事を聞いてホッとした。
すると、体の力が抜けてミミに倒れ込んでしまった。
「ご、ご主人様?」
「大丈夫だ。ちょっと力が抜けちまっただけ」
「そ、そうにゃぁ…」
「………」
俺はあることを決意した。
それを今、ミミに言おうと思う。
「ミミ」
「うにゃ?」
「ミミさえよければでいいんだけど…」
「にゃ?」
「俺と…」
「………」
「俺と……その………」
「にゃん??」
いざとなると言い辛い…
めちゃくちゃ恥ずかしい…
でも、ミミはめちゃくちゃ可愛い☆
「俺と……その………えっと」
「SMするにゃ?」
《 ズコッ 》
「そうじゃないっ! 俺と結婚してくれないかって…」
「え? ご主人様……それって」
「……は!」
言ってしまった…
つい、その場の流れに乗って言ってしまった…
「にゃぁ、その…」
「いや、あの……まぁ、そういうことだ」
ははは、どんな顔すればいいのやら…
「ご主人様の気持ちは嬉しいにゃ」
「じゃ、じゃぁ…」
「でも……結婚はできないにゃ」
「え? ど、どうして…?」
「ご主人様は人間にゃ。でもミミは…」
「………」
人間じゃないとでも言うのか?
そんなのは関係ないっ!
俺はミミじゃなきゃいけないんだっ!
「そんなの関係ないっ!!」
「ご、ご主人様?」
俺の怒鳴り声にミミは驚く。
「俺は……俺はミミじゃないとダメなんだ!」
「ご主人様…」
「ネコだろうがなんだろうが、どうでもいいんだ!」
「………」
「ミミ…」
「それでも……ダメにゃ」
「そ、そんな…」
「でも、安心してくださいにゃ」
「…え?」
「結婚はできにゃいけど、いつまでもご主人様の側にいるにゃ」
「それって…」
「にゃんっ☆ 結婚とかわらないにゃ」
「そう……だよな。ミミは俺の側にいてくれるって言ってくれたもんな」
「うにゃっ☆」
「……すま…ない」
《 バタッ 》
「ご主人様!?」
「……すぅ〜」
「にゃ? 寝てしまったにゃ」
「すぅ〜〜すぅ〜〜」
「おやすみなさいにゃ…」
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