プロローグ『夏』
プロローグ
『夏』
8月も真っ只中。
ミーンミンミンミーン!
セミがけたたましく鳴り響く午後。
俺は仕事の休憩を兼ねて、片隅の日陰のところでボーっと座っていた。
「……ふぅ」
そんな俺からでるのはため息ばかり。
高校を二年もダブってやっとこさ卒業(通算5年在学)したのだが、
定職に就くこともなく、こうして働いているのである。
いわゆる“フリーター”ってやつだ。
何がしたいのか? 何をするべきなのか?
今の自分にはそれを見つけることができず、ただ日々をなんとなく過ごしている。
これでいいのか?と疑問を抱くときもあるが、考えても無駄骨。
なーんにも答えがでず、最初の疑問に戻るのだ。
「こんなときは、どこかに行きたいなぁ」
何気なく呟いた一言が、ふっと思考に響いた。
「そうだっ、旅行に行こうっ!」
閃きは叫びとなり、いつの間にか立ち上がっていた自分に気づく。
ジリリリリリリリリリリ!
それと同時に午後の仕事を知らせるチャイムが鳴った。
「やべっ、遅れたら大変だ〜」
タッタッタッタッ!
走りながら仕事場に戻る途中、俺はずっと旅行のことを考えていた。
どこに行こうか?
何に乗って行こうか?
そんな様々な考えに胸を躍らせながら、その日が来るまでを楽しみにして・・・。
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