第7話『怒濤の朝』
第7話
『怒濤の朝』


ザァァァ〜〜〜〜!

「う……ううん…」

今日もいつもと違う爽やかな波の音で起こされる。
気分は悪くない。
いつもの目覚ましに起こされるよりは100倍ましだ。

「う〜〜〜っと」

上体を起こし、ぐ〜〜っと体を伸ばす。
そこで俺は気づいた・・・自分が裸なことに・・・。

「俺……どうしたんだ?」

疑問符がたくさん浮かんだ。
昨日の夜のことがよく思い出せない・・・起きたばっかりなのでなおさら。

「ううん……すぅ〜〜すぅ〜〜」

俺の隣から幸せそうな寝息が聞こえた。
なんだか嫌な予感がしたのだが、意を決して顔を向ける。

「………思い出した」

隣では俺と同じように裸で寝ている“あの”女の子。
あの後、酔った勢いか、流れのまま俺は彼女を抱いてしまった。

「俺ってサイテーだ…」

いくら酔っていたとはいえ、勢いで知り合ったばかりの女の子を抱いてしまうなんて・・・。

心の中に罪悪感がブクブクと沸き上がってくる。
外は憎らしいくらい晴れ渡っているのに、俺の気分は別の意味でブルー。

「過ぎたことを悔やんでも仕方ない。とにかく何か着せないと…」

失礼だと思いながらも布団をめくると、更に俺は驚愕した。

彼女の大事な部分からシーツにかけて流れている白い液体。
その中に混ざっている真紅の赤。
それは彼女が初めてだということを表していた。

「初めての女の子に……それに中出し…」

俺の罪悪感はヒートアップしたのは当然だった。
その事実はあまりにも衝撃的で、動揺は隠しきれなかった。

(俺も初めてだけど、男と女とは重さが違うよなぁ…)

スルスルスル。

とりあえず俺はなにか着せることにした。
近くに置いてあった下着と浴衣を簡単に着せる。
もちろん大事な部分はちゃんと綺麗にしておいた・・・。

………

そして数刻。

「ううん……あ、おはようございます」

女の子が目を覚まし、眠たそうな顔で挨拶をしてきた。
俺はそれにいつものように返事をしたが、内心はドキドキもんだ。

「あ、あのさ……、昨日のこと憶えている?」

「え? 昨日ですか……うーん」

しばらく考えたかと思うと、顔がみるみるうちに赤く染まり、布団を頭から被ってしまった。
それはそれで仕方ないと思う。

「その……ごめんな。謝って済む問題じゃないのはわかっているんだけど」

「………」

「酔ってて初めてなんて気づかなくて……俺ってサイテーだよな」

自分がとても情けなく思えてきた。
これじゃぁ、まるで言い訳じゃないか・・・。

「いや、言い訳は言わない。ごめん」

「あの、そんなに自分を責めないでください」

女の子は布団から恥ずかしそうに顔を少しだし、目だけをこちらに向ける。

「俺を……許してくれるのか?」

「許すもなにも…、別に怒ってませんよ?」

「…え?」

今度は俺が驚く番だった。
怒ってない?・・・どうして怒ってないんだ?
俺なんかに初めてを捧げてしまったのに悔しくないのか?

「私も嫌じゃなかったから…」

「………」

「そ、それに……とっても優しかったし…」

「…う、うん」

イマイチ記憶にないが、優しくしたのは憶えている。
別に初めてだから優しくするだとか、何度もしているから強引にするだとか、そんなのが嫌いなだけ。
ただ、俺は優しくしてやりたいと自分が思っているからそうしただけなのだ。

「……私でよかったの?」

「え?」

「だって……その…、今まで女の人としたこと無いって…」

「そ、そんなこと言ったっけ?」

「うん。最初の方で…」

き、記憶にない・・・。
酔っていて、いろんな事を言ったようだ。

「お、俺は別にいいよ」

「そ、そう……よかった…」

何がよかったのかと聞いてみたかったが止めた。
聞くだけ野暮だろう。

「も、もぉ〜〜! 恥ずかしいからこの話はな〜し!」

毛布をバッと剥ぎ取り、女の子は明るく言った。

「…そうだな」

「私のことは気にしないで。自分では後悔してないから」

「ああ、俺も後悔してない」

「うんっ♪」

こうして3日目の朝を迎えた。
なにやら怒濤のはじまりで先が思いやられる・・・。




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