第7話 帰り道
第7話
『帰り道』
《 放課後 》
「さて、帰るか」
俺は席を立ち、教室を出ようとした。
「お〜〜い! 村上〜」
そんな俺に沢田が声をかけてきた。
「…じゃあな」
「お、おいっ!」
俺は沢田を無視して、とっとと帰ることにした。
………
「…ん?」
学校を出て、歩いていると校門の前に知っている人物を見つけた。
「…美夜?」
「あっ、先輩」
「こんなところで……なにしてるんだ?」
俺は美夜に尋ねた。
「えっと……その……」
「…?」
「先輩を……待っていたんです」
「…俺を?」
「…はい」
俺を待っていたって……どういうことだ?
「どうして俺を?」
俺は疑問を投げかけた。
「それは……一緒に帰ろうかと…」
「………」
俺と一緒に帰ろうって……ことか?
「ダメ……ですか?」
「…いや、そんなことはないが…」
「本当ですか?」
「…ああ」
こうして俺は美夜と帰ることになった。
《 帰り道 》
「先輩って人気あるんですね」
「…え?」
美夜がいきなりそんなことを言ってきた。
「人気って……俺が?」
「そうです」
「………」
「私のクラスでも、先輩は人気高いですよ」
「……どういう風に?」
俺は、こんな話に興味はないのだが、話を続けるため聞いてみた。
「えっと、みんなはカッコイイとかクールなとこが良いとか言ってます」
「…そうか」
「はい」
俺はふと思ったことを尋ねた。
「美夜は?」
「えっ?」
「美夜は俺のことをどう思う?」
「わ、私ですか?」
「ああ」
「えっと……その…」
美夜は顔を赤くしながら答えはじめた。
「先輩は……優しいと思います」
「優しい……か」
そういえば、こんな話を琴美にされたこともあったな。
そして、美夜と同じようなことを言われたっけ…
「それに…」
「……ん?」
「な、なんでもないです」
「…そうか」
「………」
「………」
しばらく2人とも黙って歩いた。
「…あの」
「ん?」
ある交差点にさしかかったとき、美夜が声をかけてきた。
「私の家……こちらの方なので…」
そう言って美夜が指をさした方角は、俺の帰る方角とは反対だった。
「そうか……じゃあな」
俺は一言言い、自分の帰る方に向かって歩き出した。
「…先輩」
「…ん?」
美夜が俺を呼び止める。
「明日も……一緒に帰っていいですか?」
「……ああ。かまわない」
この日以来、俺は美夜と一緒に帰るようになった。
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