第9話 告白
第9話
『告白』
いつものように2人で帰えるなか、突然、美夜が立ち止まった。
「…どうした?」
俺も立ち止まって、美夜の方を見る。
「………」
「……美夜?」
「わ、私…」
「……?」
「………」
美夜は何か言い辛いのか、視線を道路に落とす。
「………」
俺はそんな美夜の肩に手を置く。
「何か言いたいことがあるのか?」
「………」
「何でも聞いてやるから言ってみろ」
「……先輩」
美夜は顔を上げ、真剣な目で俺を見て……
「私……先輩のことが……好きです!」
……と、言った。
「……そうか」
「………」
「俺も……美夜が好きだ」
俺は自分の気持ちを素直に言った。
俺は美夜に惹かれていた……
琴美にそっくりとか、そんなのは関係なく…
こんな俺にも、優しくしてくれる美夜。
俺はそんな優しさに惹かれた……後輩としてではなく1人の女の子として……
そして……自分で気づいたときには俺は美夜を好きになっていた。
「……え?」
「………」
「う…うそ…?」
「…嘘じゃない。俺も美夜が好きだ」
俺は照れを隠すためにそっぽ向いて言った。
「私……嬉しいです……先輩」
美夜の目から、ポロポロと涙が零れる。
「…泣くな」
「は……はい……」
美夜はそう返事をするが、涙は止まらない。
「美夜」
俺はそんな美夜が愛しく感じ、おもわず抱きしめた。
「きゃっ……せ…先輩?」
美夜は、いきなりのことで驚いていたが、しばらくすると身体を預けてきた。
「………」
「先輩……あたたかい」
「………」
「……でも」
「…ん?」
「先輩は……私でいいんですか?」
「…えっ?」
私でいいんですかって………どういうことだ?
「美夜は……イヤなのか?」
「そんなわけないです。もし、私が先輩を嫌いだったら告白しません」
「それも……そうだな」
たしかにそうだ。
だとしたら……何か引っかかるな。
「やっぱり…私みたいな子……先輩には不釣り合いです」
「……バカ」
俺は小さく呟き、美夜を抱きしめる手に力を入れた。
「せ…先輩?」
「俺の方が……お前に不釣り合いだ」
そうだ。
美夜みたいな子が俺の事が好きだなんて、普通はありえない。
「そんなこと…」
「美夜の方こそ、俺でよかったのか?」
「はいっ! 先輩じゃなきゃダメなんです…」
「…そうか」
美夜のその一言が俺にはとても嬉しかった。
「先輩……好きです」
「ああ。俺もだ」
この日から俺達は恋人同士となった。
トップへ戻る 第8話へ 第10話へ