とある店員の観察日記〜序章〜 |
みなさん、こんにちは。私は北口駅前にあるとある喫茶店でバイトをしているの。え?名前?そんなのどうでもいいじゃない。そりゃあ固有名詞があった方がいいに決まってるんだけど、準レギュラーである某部長さんだって「部長」で通ってるんだしね。なぜ私がそんなことを知っているのかも気にしないで。同じ高校に通っているってだけだから。 ところで、私のバイトをしている喫茶店には週末になると決まって5人の北高生がやって来るの。その人たちの名前はよく知らないんだけど、SOS団っていう団を作っているちょっと変わった人たちだっていうのは知ってるわ。有名だもの。私も彼らとちょっとしたつながりがある...んだけど、たぶん彼らはそんなこと覚えてないでしょうね。 話をもとに戻すけど、彼ら5人は毎週やって来るので常連さんになってるし、お支払いはいつもマヌケそうな彼(ってよく知らないのに失礼ね、私。)だし、私と同じ高校だしで、お店でもちょっとした噂になってるの。ほら、いつも制服で来ている女の子がいるでしょ。そんなことはどうでもいいわね。そんな風に噂になったものだから、一体どんな活動をしているのか興味を持ったわけ。私じゃないわよ?バイトの先輩がよ。で、私が同じ高校だからという理由で説明させられたんだけど、私もよく知らないし、知っていることといえばずっと前に校門でビラ配りをしていたことと、時々妙なイベントを開催していることぐらいで、校内での様子を観察してみたんだけど結局よく分からなかったのよね。 あ、前置きが長くなってしまったわ。そんなことがあったものだから、5人の行動を観察してみようということになったのよ。で、私は週末のバイトを空けてもらい、変装していつもは店員として働いている店に客として潜入したというわけ。店の人は気づいているから、潜入なんてのはちょっと間違っているわね。というか、この変装どうにかならないの?ダテメガネはまだいいとしても、カツラまで被ることはないじゃないの。 あ、モノローグを語っているうちに今日も彼らが来たわ。ちょうど私のテーブルの隣に座ったから会話もよく聞こえるものよ。さて、どういう活動をしているのか、じっくり観察させてもらいましょうか。 「さあ、今日の不思議探索の組み合わせを決めるわよ!」 適当に飲み物の注文をしたあと、黄色いカチューシャの彼女が大声で叫んだわ。不思議探索ね。よく分からないけどちょっと興味あるかしら。具体的には何をするのかしら 「おいハルヒ、そんな大声で叫ぶな。周りに丸聞こえじゃないか。」 「何よキョン、そんなことは気にするだけ無駄よ。それより、今日これからのことを考えなさいよ!さぁ、さっさとクジを引きなさい!」 「へいへい…」 …うーん、どうやらいつもレジに来る彼はキョンという名前なのね。いや、当然あだ名ね。ちょっと変だけど。で、リーダーっぽい彼女はハルヒというらしいわ。SOS団だから団長かしらね。といっても、彼女の名前なら北高生で知らない人はいないわ。 「印なしですね。」 「あり。」 「私もありません〜」 「俺は印つきだ。」 「何よ。ということはキョンと有希、みくるちゃんと古泉君と私ね。まぁいいわ。じゃあキョン、今日こそ不思議を見つけてくるのよ!変なもの見つけてきたら死刑だからね!」 お話を聞いていると、どうやら不思議探索とやらの行動グループが決まったみたいね。というか涼宮さん、不思議を見つけて来いと言った上で変なものはダメ、ってちょっとおかしいわよ。あと、どうして機嫌が悪そうなのかしら。伝票を彼に押し付けて先に出て行っちゃうのはいつものことね。 ちょっと待って、二手に分かれるのなら私はどちらを尾行すればいいのかしら。近くにいた先輩に視線を送ってみてもウインクされるだけだし。まぁ、ここは私が決めていいわよね。 「さて長門、どうする...って言ってもいつものことだ。図書館にでも行くか。」 自作爪楊枝クジの結果、私は印つきの方を引いたので、同じく印つきらしい2人組の方を追いかけることにしたわ。キョンくんと、もう1人の女の子は長門さんというのね。ほとんどしゃべったところを見たことがないくらい寡黙な子だわ。2人は図書館に行くみたい。ここからだと市内にあるあそこに間違いないでしょうから、気づかれないように先回り...といきたいところだけど、途中で何かするかもしれないので、ちゃんと尾行するわ。気づかれないようにするのは尾行の基本だけどね。 〜図書館〜 さて、私は今市立図書館の一角で本を読むふりをしながら2人の様子を見ているわ。ここまで来る途中に何かないかと思っていたんだけど、意外にもあっさりここに来てしまったわ。彼らは不思議探索とやらをしているんじゃないの?何もなさすぎて書くことがないくらいじゃないの!どうしてくれるのよ!って私は誰に文句を言っているのかしら。男の子、キョン君といったわね。彼は到着するなり椅子に座って眠っちゃうし、長門さんというらしい女の子の方は分厚い外国文学を苦もなく抱えて立ち読みしているだけだし、私もちょっと拍子抜けね。別組の方をつけた方がよかったかしら。ああ、なんだか私も眠くなってきちゃったわ・・・ 目が覚めたのは6時、閉館のアナウンスが流れた時だったわ。私としたことが、あのまま寝ちゃったのね。もちろんあの2人はもういないし、帰ったのかしら。結局、この日の追跡は失敗ね。バイト先に帰ってみんなに報告しなくちゃ。といっても失敗したから何を言われるのか分からないわ。 〜喫茶店〜 「すみません…」 「何やってるのよ!図書館で寝ちゃうなんて信じられないわ!」 バイト先に戻った私は先輩から文句を言われっぱなし。そりゃあ寝ちゃったのは事実だから仕方ないけど、もう謝ったじゃない。そう言うならあなたが尾行すればいいじゃない。それに、口には出せないけれど先輩こそ図書館に何時間もいたら眠りそうよ。 「来週末もあなたには入れないから、今日の分を取り返しなさいよね!」 どうやら私は来週末も仕事はないみたい。お給料が少なくなってしまうのが残念だけど、今日のことがあって先輩ほどじゃないにしても私も彼らにちょっと興味が湧いたわ。キョン君の方は大して面白くなさそうだったから、今度は涼宮さんの方を尾行しようかしら。って、このことを店長は知っているのかしら? 〜SOS団帰り道〜 「長門よ、今日一日、といっても午前の図書館の時だがな、俺たちの後ろを妙な女子高生がつけていたような気がするんだが、ひょっとして敵か?またハルヒのことを恨むような奴らが襲ってきたり、朝比奈さんが誘拐未遂に遭うようなことが起こっているのか?そうだとすると安心できねーぜ。」 「涼宮ハルヒの周りに変化は起こっていない。平常。心配はいらない。彼女のことは気にしなくていい。」 「そうは言ってもよ、正体が分からない以上は警戒するに越したことはないだろ。高校生だろうが、以前朝比奈さんを誘拐しかけた奴らも同じぐらいだったぜ?お前はいあいつについて何か知っているのか?」 「大丈夫。あなたもいずれ分かる。」 「だといいんだけどよ。できるだけ穏便にご対面、といきたいところだぜ…」 |
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